1977年大学生活で一番最初に受けた授業のことは今でも鮮明に記憶してます。
「アレンジング&理論」のクラスで学生は
わずか20名くらいでした。
先生はアメリカ人、学生はアメリカ人をはじめフランス人、
中国人、イギリス人、ドイツ人ととまるで小さな全世界でし
た。留学の醍醐味は生活をしながら世界一周しているような
ものでした。さて、授業は「アレンジング&理論」ですから簡
単にいうと編曲とジャズ理論について習うクラスで、これこそ
が私のアメリカ留学の具体的な目的のひとつでした。すでに
1960年代にサックス奏者の渡辺貞夫さんが同大学に留
学をして帰国後にバークリー理論をまとめた「ジャズスタデ
ィ」というバイブルが出版されましたがそれは大変簡素化さ
れた内容でした。
授業はカルチャーショックの連続で、宿題がメインといっ
ていいほど、その量がとにかく膨大でした。「教科書50ペー
ジ分を読んで要約をまとめてきてね」「1週間後には4管編
成のアレンジを3曲提出ね」などと、サラッと課題を出され
ては何度泣かされたことか。
もちろん、課題以外に予習もしなければ授業につい
ていくことができません。授業は基本的に予習をしてきていると
いう前提で進むのです。そのため、予習をしておかないと、デ
ィスカッションについていけず、黙り込んでしまうことになります。
発言をしないとやる気がないとみなされてしまい、とにかく参加
型というのがアメリカの大学の授業形態でした。
「アメリカの大学は入るのは簡単だけれども出るのが大変」
といった言葉は、まさにこの宿題の多さにあるのだなぁと実
感したものでした。先生の話を聞き逃すと宿題の内容が分
からなくて、必ず授業後にその事は確認していました。しかし
何でも尋ねればおしえてくれるのは助かりました。
また音楽は世界共通の楽譜と実際の音があるために言
葉では分からなくてもおおよその検討がつくのです。海外で
生活するのには日本人に一番求められるのは「積極性」
でしょうか?IQよりも愛嬌です!私の4年間の留学生活で
はこのちょっとした積極性のコツを掴んだことで自身の価値
観がおおいに広がりました。
(栗田屋本店 彩り通信 掲載コラム 2019/5)